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# テイクバック |
+ テイクバックの本来の姿 |
+ バックトップまでの流れ |
+ バックトップ〜トップ |
+ ゼロ・テイクバック |
# テイクバックの本来の姿 |
テイクバックとは主に投球腕の投球準備動作のことを言います。 |
下半身で稼いだパワーを維持しつつ、効率よく伝えるためにも重要な動作です。 |
直接ボールをコントロールする投球腕の動きであるので、球速、制球に大きく影響します。
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少し極端ですが、下半身の強さ、使い方が下手でも上半身の動作がよければ球速も制球も良くなります。 |
プロ野球投手のなかにも、下半身の使い方はイマイチでも上半身の良さがあるためにいいボールを投げている |
投手が数多くいます。「下半身の強さ」だけでは球速も制球も安定しません。
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下半身はパワーを稼ぐことが目的であり、上半身はそれを効率よく伝えるのが目的です。 |
球速向上のために、何ヶ月もかけて下半身を鍛えて筋力を鍛えるよりも、上半身の正しい使い方を学び、 |
パワー伝達の効率を高める方が手っ取り早いのです。その上、故障を防ぐこともできます。 |
# バックトップまでの流れ |
バックトップとは、テイクバックで腕を最も下方向へ下ろした瞬間の位置をいいます。(図1) |
図1 バックトップの場面。腕をストンと落とす感覚で。 |
―――脱力 |
テイクバックは全体的に脱力が基本ですが、バックトップまではとくに脱力が必要です。 |
変に意識すると力んでしまう事が多いので、「腕をストンと落とす」程度の意識でOKです。 |
このとき、脱力できていれば腕は8〜9割伸びています。力んでいると腕が曲がります。チェックポイントの1つです。
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―――回旋運動、RSSC |
脱力と同時に大事な動作があり、それは腕の回旋運動、RSSCと呼びます。 |
RSSCについては重要ながら難しい話なので専用ページを作成したので参照してください。
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―――バックトップまでのRSSC |
まず、バックトップまでは腕はダラーンと脱力しながらも、腕は軽い内捻り、つまり手の甲が軽くサード方向を |
向いているべきです。ただ、だからといって無理やり内捻りしても逆効果、危険な投球動作になります。 |
肘から挙がるテイクバックならば普通にしていれば腕は軽い内捻りであるはずです。
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順を追って説明しますが、テイクバックからリリース〜フォロースルーにかけての腕の回旋があることは |
投球、ボールを投げる上での常識です。無知のままでは肩肘の故障につながる可能性もあります。 |
# バックトップ〜トップ |
―――腕の曲がり具合 |
腕は、肩と平行ぐらいにまで上がってきた頃には既に90度近くまで曲がっているべきです。 |
これはバックトップでの脱力ができていればほぼ意識することなく、なるものです。
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このとき腕が明らかに90度以上鋭角に曲がっていれば力みすぎです。 |
もし投球で、自分が思ったところより下方向にボールが行ってしまう場合は、 |
この力みが影響していることがあります。
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―――Cアーチ |
ちょうどこの場面は、Cアーチと呼ばれる場面を通ります。(下画像) |
クリアしなければならない条件としては、 |
1.エッジングが効き、軸足のかかとが地面から離れようという瞬間 |
2.まだ開かずに適正角度で踏み出している踏み出す足が着地する寸前 |
3.脱力を保ち、90度近くまで程よく曲がっている投球腕 |
4.上体が開かず、ヘッドステイバックが維持できている状態 |
が挙げられます。 |
Cアーチ。ここでの動作をチェックする。 |
―――CアーチでのRSSC |
CアーチでのRSSCは、バックトップまでは手の甲サード方向の内捻りでしたが、 |
肩と平行まで上げたタイミングではちょうど手のひらが地面を向く程度まで外捻りしています。(図2) |
特に意識しなくとも、腕が上がってきているのですからこの程度の方向を向いています。 |
このタイミングで、まだ内捻りだと、非常に肩が上がりにくくなり、肩を痛めることがあります。 |
図2 このタイミングでは手のひらが下方向
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―――トップを作る |
そして、トップの場面です。 |
トップでは腕の角度約90度、手のひらがサード方向を向いているべきです。(図3) |
トップではできる限り上体は開かずに1stスピンだけが進行していることが望ましいです。 |
ここで股関節、体幹、肩甲骨周辺の柔軟さによって大きな差が生まれます。 |
図3 腕の角度と向きに注目
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よくある間違いとして、「トップのとき手のひらをセンター方向」という教えがありますが、 |
それは間違いです。実際やってみると、手の筋〜手首付近に張りのようなものを感じ、 |
肩の骨のかみ合わせもイマイチで、よく肩がコキコキとなる人もいます。これが体に良いわけありません。 |
腕の角度90度の理由
第一の理由として、慣性モーメントとのかかわりです。
わかりやすくいえば、腕を伸ばすと遠心力は大きくなるがスイングは遅く、
腕が伸びていないとスイングは速いが遠心力は小さいという力と距離の関係です。
これらのバランスをとるために中間的な角度として90度を目安にしているのです。
そしてこの90度というのにはもうひとつ利点があり、それは力が伝わりやすいということです。
腕相撲をするとよくわかりますが、最も力を効率よく発揮できるのは90度腕を曲げたときです。
伸ばしていたりまげすぎていては思うように力が伝わりません。
ボルトを締める道具を見ると、よく直角に曲がっているものがありますが、それも同じです。 |
トップを作るタイミングは図3を見てもわかるように踏み足の着地直後がバランスが取れています。 |
これが早ければ、タメがなく、上体に頼った投げ方になります。
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また、トップのタイミングが遅いと、腕が遅れすぎてゼロポジションをはずし、 |
リリースでもターゲッティングができずにゼロポジションをはずしかねます。気をつけましょう。 |
# ゼロ・テイクバック |
ゼロ・テイクバックとは「ゼロポジションを考慮したテイクバック」のことを言います。 |
ゼロポジションについてはリリースのページで詳しく解説します。
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テイクバックであっても、できるだけゼロポジションに入れやすい動作を行うことで |
故障しにくい投球動作になります。これは投手にとって非常に大事なことです。
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テイクバックで大事なことは、「バックトップから腕を背中側に引きすぎない」ということです。 |
図4を見てください。これはバックトップ前後の場面です。 |
図4 バックトップ背面 |
この場面から赤い線をたどるように、背中に引きながらテイクバックするのと、青い線をたどり、 |
青線のあまり背中に引かないテイクバックとでは、どちらが楽かと言うと、青なのです。
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もし背中に引きすぎれば、肩の関節の関係で腕が非常に上がりにくくなります。 |
それはスムーズなテイクバックを妨げ、肩の故障へとつながります。
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ですので、この場面からは肩のラインと水平ぐらいの線で腕を引き上げることが重要です。(図5) |
図5 肩より背中に腕を引かない
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ここですこし不満に思った方はなかなか読みが鋭いといえます。 |
このように青い線でテイクバックすると、タメが作りにくいのではないか?ということです。
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たしかに、できるだけ腕を遅らせたいのに早く腕が前に出るような青線のポジションは不利です。 |
それの解決策は簡単です。腕を引き上げてから後ろへ引けばよいのです。
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つまり、ゼロ・テイクバックを行い、自然な形で腕を引き上げたら、もうそれ以上腕を上げる必要はないので |
背中側へ腕を引くのです。ただし、ここで重要なのは、引くのはトップの時ではなく、 |
肩と平行に上げたタイミングで腕を引くのです。(図2) |
そして、感覚として腕を引くのではなく、肩ごと引く感じで行うのです。 |
無理をして腕を引いてもゼロポジションをはずす危険な動作になってしまいます。 |
図2 腕をあげたらこのタイミングで腕を引け |
やってみればわかりますが、トップというのは腕の本番のスイングの直前です。 |
そんなときに逆方向に腕を引いている暇などまったくありません。 |
なのでまだ本番スイングの準備段階であるときに腕を引き、遅らせるのです。 |
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